DOCTOR’S MAGAZINE 2025年6月号を発刊しました
6月号の「ドクターの肖像」では、九州大学大学院 医学研究院 循環器外科学 教授 塩瀬 明氏を特集しました。塩瀬氏は、「心臓では死なせない」を信念に、道なき道を歩んできた心臓外科医の第一人者です。幼少期は飛行機に興味を持ち、医学部と工学部の進路選択で迷いながらも、九州大学医学部へ進学しました。
九州初の移植手術を行う中で抱いた「なぜこの補助人工心臓には感染が多いのか」という疑問の答えを求め、36歳の時に渡米を決意。そこから、心臓血管領域における世界的な施設であるクリーブランドクリニックで、エンジニアと補助人工心臓の研究開発に取り組み、研究チームをけん引しました。さらに、「救命の幅を広げたい」との思いから、心臓移植と肺移植の両方が学べるピッツバーグ大学で年間150例以上の手術に関わるなど、過酷な環境下で研鑽をつみました。小児と成人、心臓と肺、あらゆる領域を横断しながら、塩瀬氏はその柔軟な発想力で、「心臓が止まっても患者の生存を可能にする」新たな術式を考案しました。最初に論文を投稿した雑誌からは、一度否定されたものの、別の雑誌で「ゲームチェンジャー」と絶賛されました。
帰国後は、九州大学教授に就任し、手術の効率化と教育改革を断行しながら、同大の心臓移植件数を15倍にまで引き上げました。また、小児移植にも力を注ぎ、日本最年少の6kgの子どもへの移植も成功させました。困難な症例にも決して背を向けず、誰も踏み固めたことのない道を、自らの足で切り拓き続ける塩瀬氏の物語を追いました。
「Challenger -挑戦者-」では、クイーンズメディカルセンター ホスピタリスト部門長・亀田総合病院 総合内科部長の野木真将氏を特集しました。アメリカでは、病棟診療を専属とするホスピタリストが浸透し、医療の質の向上や研修医教育の充実、医師の働き方の改善など、あらゆる面で医療問題の解決策となっています。野木氏は、日本でもホスピタリストを普及させるために、ハワイと千葉を行き来し、二拠点勤務を行っています。アメリカの最新医療システムに携わり、日本の医療に必要なものを見極めながら、日本流ホスピタリスト育成に取り組む野木氏の挑戦を追いました。
その他、「FORTE -日本列島病院探訪-」では、東京都大田区の地に根差し、長年地域に親しまれてきた牧田総合病院を特集しました。2021年には、蒲田へ病棟を新築移転し、「病院を変える、地域を変える」を合言葉に、シームレスな医療・福祉・介護ネットワークを築いてきた同院の取り組みと今後の展望を伺いました。連載コラムの「押し売り書店“仲野堂”」では、酒を主食にする民族の調査のためにエチオピアへ行く旅行記をはじめ、世界の秘境の地を冒険する探検家たちによる3冊をご紹介します。今月も、全国各地で活躍する医師や医療法人を、様々な観点からご紹介しております。
<DOCTOR’S MAGAZINE 2025年6月>
■ドクターの肖像
九州大学大学院 医学研究院 循環器外科学 教授
塩瀬 明
■Doctor’s Opinion
“肥満症診療の最新動向”
国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 院長
門脇 孝
■連載コラム
押し売り書店“仲野堂” #41
大阪大学 名誉教授
仲野 徹
■Challenger-挑戦者
クイーンズメディカルセンター ホスピタリスト部門長
亀田総合病院 総合内科部長
野木真将
■Dr.徳田のクリニカルパールズ
全身性浮腫の原因は?
■FORTE -日本列島病院探訪-
社会医療法人財団 仁医会 牧田総合病院
■臨床研修指定病院紹介
社会医療法人 弘道会 守口生野記念病院
国家公務員共済組合連合会 新別府病院
■専門医研修紹介
津軽保健生活協同組合 健生病院
公益財団法人 浅香山病院
■医療過誤判例集
腹部造影CT検査の結果を受け速やかにEOB造影MRI検査などの検査を行う義務の違反と死亡との因果関係、損害
■医局紹介
東海大学医学部医学科 外科学系消化器外科学
福井大学医学部附属病院 神経科精神科
■Medical Topics/Student’s Voice
メディカルトピックス/医学生の声